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マーケティングエンジニアリングとは|Google広告の通知で実践

スマートフォンの通知と広告のグラフが映るノートパソコンが並ぶデスク

マーケティングエンジニアリングとは、限られた予算と手間を、データと仕組みの力で最も効く施策へ回す取り組みです。言葉としては、学術の世界での意味と、現場の実務での意味の2つがあります。

この記事では、2つの意味を整理したうえで、実務側の進め方を1つの実例で示します。題材は、私がGoogle広告の異常を毎朝チャットへ知らせるために作った通知です。作って動かすまでに直した7か所を、数字と一緒に書きました。

マーケティングエンジニアリングとは。学術と実務の2つの意味

学術の意味は、マーケティングの意思決定を、数理モデルとデータで支える分野です。国内の入門書に、上田雅夫氏・生田目崇氏の『マーケティング・エンジニアリング入門』(有斐閣、2017年)があります。紹介文によると、「いかに限りあるリソースを配分し、最も効率的な施策に繋げるか」という課題に応える本です。

実務の場面では、施策を人の手作業から、データで動く仕組みに変える取り組みを、この言葉で呼ぶ人もいます。担い手はマーケティングエンジニアと呼ばれます。

2つの意味は、別物ではありません。どちらも「限られた資源を、根拠を持って配分する」ことが目的です。学術側は配分を決める理屈を、実務側はその理屈を毎日回す仕組みを担う、と私は整理しています。

マーケティングエンジニアリングの進め方。私が回している5段階

私は仕組みを作るとき、次の5段階で進めています。

・人がやっている判断を、言葉にする

・元データの形を確かめる

・本番の前に、試運転で動かす

・誤報を数えて、基準を直す

・送る頻度と、止まったときの扱いを決める

どの段階も、コードを書く作業ではありません。コードはAIに書かせています。私が時間を使うのは、何を正しいとするかを決める部分です。

実例:Google広告の異常を知らせる通知を作った

医療系のクライアントの院長から、Google広告に異常が出たら朝のうちに知りたい、という依頼を受けました。2026年9月10日に依頼があり、翌日に本番の初回を送っています。いまは毎朝8時30分に、院長とのチャットへ自動で届きます。

毎日送るのは、次の2種類だけにしました。どちらも、3日間の合計を、その1週間前の3日間と比べて判定します。

・CPA(1件の成果を得るのにかかった広告費)の高騰

・予算の消化不足(決めた予算に対して、広告費が使われていない状態)

この2つに絞るまでに、5段階の途中で7か所を直しました。

■ 直し1:率で判定すると、通知が鳴りすぎた
最初は、CPAが前の期間より何%上がったかで判定しました。基準を20%、30%、40%と変えても、1日に3〜6件が鳴ります。これでは院長が読まなくなると考えました。

そこで、影響額(その異常で動いた金額)が5万円以上のときだけ送る条件を足しました。通知は1日0.5件ほど、つまり2日に1件まで減っています。この判定の考え方は、FDM(Forward Deployed Marketer)とはでも触れました。

■ 直し2:小さなキャンペーンが毎日並んだ
Google広告では、キャンペーン(予算と配信をまとめて管理する単位)ごとに1日の予算を決めます。予算の消化不足も、最初は消化率(予算のうち実際に使われた割合)だけで判定していました。すると、日予算3,000円の小さなキャンペーンが毎日のように並びます。こちらも金額で絞り、未消化が1万5千円以上のときだけ送る形にしました。

■ 直し3:直近の成果が、あとから増える
CV(コンバージョン。予約や問い合わせなどの成果)は、発生した日より後になって計上されることがあります。直近の数日を比べると、CPAが実際より悪く見えてしまいます。そのため、比較から直近3日を外しました。2回観測したところ、成果の数は4〜5日で確定していました。

■ 直し4:「状態」を毎日送っていた
広告の表示の取りこぼしや、掲載順位で競合に負けている状況は、毎日大きく変わるものではありません。変化ではなく状態なので、毎日の通知から外しました。毎週月曜に、全件をまとめて送る形に変えています。

■ 直し5:止めたキャンペーンが、消化不足として鳴った
元データのCSV(表形式のデータファイル)は、広告が配信された日にしか行が出ません。途中で止めたキャンペーンは行が消え、消化が足りないように見えます。3日とも配信があったキャンペーンだけを判定する条件に変えました。

■ 直し6:試運転で履歴を書くと、本番の初回通知が消える
同じ内容を毎日送らないように、通知の履歴を記録しています。試運転の段階で履歴を書き込むと、本番の初回が「送信済み」の扱いになって送られません。履歴は、送信に成功した後にだけ書く作りに直しました。

■ 直し7:本番の翌朝、自動実行が動かなかった
本番の初回を送った翌朝、通知の処理が起動しませんでした。自動実行の設定から日本語のフォルダ名を渡したところ、途中で文字化けしていたのです。呼び出し方を変えて、いまは毎朝動いています。

運用で決めたこと。送りすぎない・止まったら知らせる

7か所を直したあと、送り方の決まりを3つ足しました。

・同じキャンペーンの同じ種類の異常は、3日間送らない

・金額が前回の1.5倍以上に悪化したときだけ、再送する

・データが3日より古いときは、院長には送らず私に警告を出す

最後の1つは、データの収集が止まったまま「異常なし」と見える事態を防ぐためです。通知が来ないことを、問題がないことと取り違えさせない作りにしました。

設定を変えるときは、試運転で本文を確かめてから本番に出します。院長に届く文面が変わる場合は、作った私とは別のAIに文面を審査させる決まりです。任せる範囲と承認の線引きは、AIに任せる範囲を3段階で決めるにまとめました。

5段階を飛ばすと、どこで失敗するか

7か所の直しを5段階に当てはめると、どの段階を飛ばしたかが分かります。

・直し1・2・4は、段階4で見つかったものの、段階1(判断を言葉にする)で決めておけば防げた

・直し3・5は、段階2(元データの形を確かめる)を飛ばしていた

・直し6・7は、段階3(試運転)と本番の違いを見落としていた

どれもコードの書き間違いではありません。何を異常と呼ぶか、データがどう記録されるか、本番で何が起きるか。この3つを先に決めていれば、防げたものばかりでした。

まとめ

・マーケティングエンジニアリングには、数理モデルで意思決定を支える学術の意味と、施策を仕組みに変える実務の意味がある

・実務の進め方は、判断を言葉にする、データの形を確かめる、試運転する、誤報を数えて直す、運用を決める、の5段階

・Google広告の通知では、率より金額で判定し、状態は週次へ回し、試運転と本番の差をつぶすことで、通知を1日0.5件まで絞れた

いま人が毎朝見ている数字が1つあれば、それが最初の題材になります。その数字で「何が起きたら異常か」を、まず1行の文章にしてください。

この記事を監修した人

執筆:Claude Code スキル「ライティング君」

監修:岸本 成(合同会社1nd)

広告運用を起点に、SNS、ホームページ、店舗や施設での集客まで、全体の設計と実践を手がけています。

・2020年:広告運用者として活動を開始。SNSやGoogleマップの運用にも知見があり、広告以外の集客の相談にも数多く応えてきました

・2025年:AI導入支援事業を開始

・2026年6月:FDM(Forward Deployed Marketer。顧客の現場に入り、AIとマーケティングで集客の仕組みを作る専門家)として、集客支援の請負を開始。現在11のクライアント様で実施中

目的に合わせて、次のページもご覧ください。

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